人間は色眼鏡に慣れてしまう
Akitan55です。
シンガポールB級グルメのネタでブログスタートしましたが、ブログ使い方に少しは慣れたので、本来書きたい方向のネタを少しずつ増やしていきたいと思います。
30代後半ぐらいから気が付くようになったのは、タイトルにあるように、「人間は色眼鏡に慣れてしまう」と感じる場面がやたら多いこと。
ビジネス、政治・社会のニュース、至るところでです。
ここでは具体例として、ビジネスシーンの例で挙げます。
企業で、ある製品の開発を行っていたとします。でもその製品は何らかの状況により、もはや製品化の目途は立たない。状況はいくらでも理由ありますが、たとえば、以下のようなことが考えらえるでしょう。
1. そもそもその事業分野で海外勢に市場を支配されて、勝つ目途が全くない。
2. 競合他社の資金力が桁違いに多く、リソース増強なくしては戦えない。
3. 技術のスジが悪く、製品化の目途が全く見えない。
どれも聞こえは悪いですが、現実社会の企業では普通に起こりうる事例です。望ましいことではないですが、どんな優秀な企業であれ、現実問題としては生じるでしょう。
現実的に製品化は難しい。これが現実の正しい認識。関係者の多くが心のなかではそう思っている。しかし、それを認めてしまうと、色々とやっかいな問題が起こる。たとえば、
マネージャーとして、部門の位置づけが落ちる。そんな判断はできない。
スクラップして人員再配置やらなければならない。それは、やりたくない、
などなど。
これらに対応するアクションはいずれも重く、口にすることもはばかられる。そんなシナリオを想像することすら、組織の一員としてはあるまじき行為。
すると、どうなるか、、。
厳しい現実を見たくなさに、色眼鏡をかけて、現実を捻じ曲げ始めるわけです。
「戦況は良好、わが社は勝利をおさめている。」
「開発中のものはすごい。」 --> マスコミにプレスリリース。マスコミは素直に信じる。
などなど。
大衆は弱いもの。面倒な話を聞くと、やる気が落ちる。だから、戦意・士気向上はマネージメントのなかの大きな役割の一つでしょう。上記はある程度はやらざるを得ない、必要悪なのかもしれません。
でも、不思議なのは、必要悪だとして自らのなかで認めてやればよいものを、そもそもの、現状認識のスタートから捻じ曲げてしまうこと。自分に都合のより色眼鏡を常時かけはじめます。
「わが社は本当に勝っている。事実、わが社が勝利をおさめているという報告を上も認めたじゃないか。」
「プレスリリースでマスコミも取り上げたじゃないか」
これって、太平洋戦争で戦況悪く、ミッドウェーで大敗しているのに、その負けを認めない状況そのもの。
本来は、
「現実は悪い、でもそれを打開するために、必要悪の行動をとる。」、なはずが、
いつのまにか、
「現実はそもそも悪くない。勝っている。(必要悪によるアクションの)効果を見ただろ。」
にすり替わる。
組織内でこれが上手くいくと、味をしめて、さらに症状は悪化します。
上記の状況を概念図で表すと次のようになります。
図1の左のように、現実には確かに、悪い情報も沢山ある。良いことではないが、仕方のない現実でもあり、これ自体はさほど深刻ではありません。大事なことは、それらに対策をうつことなのに、図の右のように色眼鏡をかけて、悪い情報はカット、良い情報を増幅します。
すると、悪い情報はそもそも「存在しない」のですから、悪い情報に対する対策はとられないことになります。大事な初期消火の機会を逸するわけです。
この色眼鏡をかけた状態を続けると、状況はさらに悪化します。それが図2です。
図2の左のように、図1の場合の現実よりも状況は当然悪化します。対策が何もとられなかったので、当然です。
でも、状況が悪化した場合ですらも、小さいながらも良い情報というのは起こります。これを同じように色眼鏡をかけて、悪い情報はカット、良い情報は増幅、をやるわけです。図の右側がそれを示します。状況は悪いのに、図の右側はまだ捨てたもんじゃない、と現実とは180度違った景色となります。
ここで厄介なのは、図の左側の現実に照らし合わせたときに、少なくとも良い情報は事実ではあることです。そのため、図の右側の良くみえる景色も、根拠のない情報で作った景色ではないため、「事実に基づく」と、自分も他人も騙せます。色眼鏡をかけると、事実をロンダリングして、良い状況に変化させることが可能なのです。
大衆操作のために、一時だけカンフル剤として、色眼鏡を使うこと、これもある程度は必要悪かもしれません。
でも、現実社会とは異なる世界を見せてくれる楽しい色眼鏡に慣れてしまい、その麻薬効果にはまってしまう。
色眼鏡に慣れてしまうことの怖さをつくづく感じます。色眼鏡は状況をスパイラル的に悪化させる麻薬だと感じます。
Arrivederci !
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